マーケティングにおける顧客の「時間価値」の変化について
近年、私たちを取り巻くサービスの変化により、顧客行動は目まぐるしく変化しています。
そのような変化を理解し、適応することで、より効果的なマーケティング施策の実施やWEBサイトの設計をすることが可能になります。
本コラムでは、顧客の時間価値に対する変化を、具体的な事例を用いてご紹介します。
日々変化する顧客行動を理解し、競合サービスとの差別化を図りましょう。
顧客は「お金」よりも「時間」を失いたくない
現代は、金銭価値よりも時間価値が重視される傾向にあります。
言い換えると、コスパよりもタイパが重視されているということです。
そのように変化した背景の一部として、スマホ利用時間の増加が挙げられます。
スマホを使用していると、非常に多くの情報がひっきりなしに脳に割り込んできます。
例えば、
- SNSのタイムライン
- メッセージの通知
が、挙げられます。
その結果、深い集中や意思決定に使えるまとまった時間が減少するとともに、認知負荷の増加によって判断力が低下しているという、「時間自体はあるのに、使いこなせていない」状態となってしまいます。
この状態下だと、残された「使える時間」の損失を恐れ、限られた時間の中で効率性を重視するようになります。
これが、「タイパ」が重視されるようになった背景の一部です。
企業が無意識に奪っている「顧客の時間」とは
日々、膨大な情報や選択肢に囲まれている顧客にとって、「時間が奪われる=タイパが悪い」場面は、ただの不便ではなく心理的ストレスとして感じられます。
この背景には、行動経済学で説明される人間の特性が基づいています。
企業が時間を無意識に奪っている構造と、顧客が忌避する心理を理解することで、CXの向上が図られます。
顧客が「時間を奪われた」と感じる瞬間は、大きく4つに分けられます。
① 探す時間が長い(認知負荷が高い)
人間の脳は、同時に処理できる情報量が限られています。
情報が多すぎたり、導線が複雑だと、認知負荷が高まり脳が疲れ、「時間を失った」と感じてしまいます。
結果として、途中離脱につながってしまう可能性があります。
例)
- サイト内で料金表がどこにあるか分からない
- 商品ページで必要な情報がまとまっていない
② 選択肢が多すぎる(選択のパラドックス)
選択肢が多いほど比較に時間がかかり、なかなか決められない状態に陥ってしまうことを、選択のパラドックスと言います。
選択肢が多く、決定するまでの時間が長くなると、顧客視点での効率性は低下します。
例)
- 似たようなプランや商品が大量にあるサイト
- 多種多様なオプションや複雑な料金体系
③ 待たされる(損失回避)
人間は、得よりも損を強く感じるとされています。これが損失回避です。
待ち時間は直接的に時間の損失として認識されやすいため、改善することが重要です。
例)
- 問い合わせの返信が遅い
- 納期が曖昧で、いつ届くか分からない
- SNSや動画サイトの広告(一定時間スキップできない/閲覧の妨げになる など)
④ 手間が多い(認知資源の消耗)
項目数が多いフォームや煩雑な手続きは、顧客の認知資源(判断力・集中力)を消耗させます。
認知資源が減少すると、判断が面倒になり、離脱が発生しやすいです、
例)
- 会員登録フォームの入力項目が多すぎる
- 購入までのステップが多いECサイト
顧客の時間価値を高めるための設計視点
では、顧客の時間価値を高めるサービスにするには、どのように改善すれば良いのでしょうか。
前章の4つの要素をもとに、表形式でご紹介します。
| 観点 | 目的・考え方 | 顧客心理のポイント | 改善策の具体例 |
|---|---|---|---|
| ① 探させない | 認知負荷を減らす | 情報量よりも「どこにあるか分からない」ことが迷いの原因 |
|
| ② 迷わせない | 選択肢を減らす | 「選びたい」より「間違えたくない」という不安 |
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| ③ 待たせない | スピードと透明性を確保 | 待ち時間は損失と感じやすく、不安が生まれやすい |
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| ④ 手間を減らす | 認知資源を守る | 離脱理由の多くは「面倒だから」 |
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時間価値の高いサービスが、最後に選ばれる
現代の顧客が求めているものは、必ずしも金銭的価値の高さや機能性の高さではありません。
限られた時間や脳内リソースの中で、時間をどのように利用するかを考えると、「自分の時間を大切にしてくれるか」が選択基準の1つとなります。
単なる効率化ではなく、効率化したうえで顧客の小さな心理的負担を取り除くことで、顧客に対して安心感を提供することが可能となります。
市場が成熟すればするほど、価格や機能で競合との差別化を図るのは容易ではありません。
だからこそ、時間価値を向上させる取り組み、言い換えれば顧客の時間を尊重する姿勢こそが、顧客の定着につながる大きな一因となり、マーケティングにおける顧客の「時間価値」に良い変化をもたらすでしょう。